2018年10月24日
YONEXの新型エアロロードフレーム「AEROFLIGHT」は、東京駅にほど近いYONEX本社で発表された。
昨今では各メーカーさんから、エアロロードが盛んに登場している。見た目のインパクト?だけではなく、そこには自転車の進化していく理由がある。
本当に開発費を費やして、しっかりデータを取りながら取り組んでいるメーカーがある一方で、他社のモデルをコピペして見た目重視のフレームを作るメーカーも少なくないのが実情だ。
ではYONEXの新型エアロロードはどうだろうか?非常に興味の湧くところだ。これまでのCARBONEXやHRフレームは確かなモノ作りをしてきた純国産メーカーだけに期待も膨らむ。約4年の開発期間を要したエアロロードとは・・・?
『おぉ!カッコイイ!』実物の第一印象はバランスの良いエアロシェイプ。しかも使っているパーツは全て既存のノーマルパーツのみ。無理矢理感は全く見せていない。ブレーキキャリパーもダイレクトマウントではなくノーマルタイプに仕上げている。
ここまでは見た目重視のホームセンターブランドでもコピペすれば似たような物は作れる。なので、もっと詳しく知りたい衝動に駆られる。
まずはヘッドチューブ。現在のCARBONEX、HR同様に上のベアリングはオーバーサイズ(1 1/8″)、下のベアリングはワンポイントファイブ(1 1/2″)ではあるが、ベアリング部分以外は20mm細くカットされている。フロント周りの剛性は問題なさそうである。
ハンドル・ステムもオリジナルの物ではなく、一般に流通している物が使える。カスタマイズが容易に行えるわけだ。ケーブルの取り回しもCARBONEX/HRの流れがそのままである。
フロントホークはブレーキキャリパー部分だけ凹んでいるが、翼断面をしっかりとったカムテールになっている。またハンドルストッパーは付けていないので、歩道の上で旋回も可能である。これはTTバイクではなくロードバイクの位置づけがしっかりコンセプトに反映されている。
カムテールのコンセプトを解説するとこうだ。↓
(YONEX HPより引用)
カムテールとは、ここでは仮想テールと言う意味で使われる事が多い。流線型の後部を切り落としている形状で、流線型のままだと、左右から流れてきた空気がぶつかる所で逆向きの渦が発生してしまうために後部を無くしている。元々は車のデザインからきているが、自転車のフレームの場合は、カムテールと流線型ではカムテールの方が空気のエアロ効果と整流効果は高い実験データが数多く報告されている。
バックはどうだろうか。シートチューブからシートステーもしっかりカムテールになっている。現在のエアロ形状はこのカムテールが一般的になってきている。「Made in Japan」ロゴと「日の丸」もしっかり付いている。
次の写真はリアのブレーキキャリパーを下から覗き込んだものになる。見て分かるように、ピポットボルト部分は凹んだ作り方をしているので、ノーマルのキャリパーを普通に取り付けれる。エアロロードとなると、何かとブレーキキャリパーが独特だったりメンテナンス性で難しい物もあるが、このフレームはこの問題も難なくクリアしている。このブレーキブリッジを見れば、「なぜ今までのエアロロードはこの形状にしなかったのか?」と不思議になるほど簡略にしかもしっかりと作り込まれている。
3枚目、4枚目の写真はチェーンステーからフロントメカ及びBBの上あたりになる。チェーンステーの形状も見直されている事が分かるが、フロントメカ辺りのシートチューブに注目してもらいたい。R曲線もしっかりカムテールに仕上げつつも25Cタイヤを装着していてもこのクリアランスが確保されている。しかもバック(BB~リアホイール)、チェーンステイレンジも全サイズ共通の405mmに設計されている。代表的なTTバイクでも、この405mm前後である。もしくはこれ以上長いバイクもある。それでいて28Cまで対応するらしい。最近の流れを外していない。
これの意味することは、YONEXが無難を選ばず、より攻めの姿勢でモノ作りと開発をしていることが伺える。全ては選手ファーストと言える妥協なき開発とモノ作りをするメーカーだと言うことだ。
それぞれのエアロ効果を追求したAEROFLIGHTとCARBONEX・HRと比較すると約20%の空気抵抗を低減することに成功しているのだ。
このエアロ効果については、目に見える物ではないので、「本当なの?」「気持ちの問題でしょ!」と大きな問題としてこなっかた部分だが、あるメーカーの教育ビデオではライドに影響する6つの要素について分析し、転がり抵抗・ホイールベアリングの摩擦抵抗・ドライブトレインの効率・運動エネルギー・重力による位置エネルギー・そして空気抵抗で、この6つの要素が組み合わさり、ライダーのエネルギーが消費され、速くなったり遅くなったりすると言う。この6つの要素を「サイクリングパワーイクエイジョン」という格式ある研究で立証されているらしい。時間がある方は、ぜひ調べていただきたい。
その中で興味深いデータとして、たった時速15km/hに到達した時点で全出力の50%が空気抵抗になり、30km/hではなんと全出力の70%が空気抵抗と皆さんは戦っているのだ。なんと恐ろしい・・・、日頃〇〇ワットでトレーニングだ!と目指している出力ワットのほとんどが、実はこの空気抵抗に立ち向かうものだったのだ。
そしてそのビデオの続きはこう付け加えられている。「時速が15km/hを超えると空気抵抗の要素のみが増え続けます。これはつまり、多くの人が考えている以上に低速域でもエアロダイナミクスが重要だということです。プロレーサーに限らず誰でも空気抵抗を軽減することでメリットが得られるということです。」と。ここまでデータを見せられると、その後どう考えるかは皆さんにお任せしましょう。
話を元に戻し、全体のバランスを見て欲しい。写真からも分かる通り、乗車するとリアホイールにしっかり重心が掛かり、キビキビ感のある走りをしてくれるバイクだ。これはCARBONEX・HRの良さをそのまま継承している。
そして何より完全なホリゾンタル(トップチューブが水平)設計で、前三角が大きく作られている部分に注目していただきたい。
前三角をホリゾンタルにする事によってどうなるのか?ここがCARBONEX/HRと異なる大きな点に繋がる。
まずホリゾンタルにすると、前三角の繋ぎ合わせる支点が離れる事によってフレームのネジレやタワミが大きくなるのは、どなたでも容易に理解できると思う。カーボン素材はこのネジレやタワミが振動吸収や推進力になっていくのである。
しかし、YONEXが使用してきた素材そのままでは多くのライダーを納得させるまでには至らなっかたであろう。形状が大きく変われば、その形状に合わせた素材が必要になるのは当然のことである。この点をしっかり理解しモノ作りをしてくるのがYONEXなのである。
今回のこのエアロロード「AEROFLIGHT」にはNewTecnologyとして『Namd』なるモノが使われている。この新しいカーボン素材は、国内産の新しい素材だ。
開発したのは大阪のニッタ株式会社( https://www.nitta.co.jp/?post_type=news-release&p=16663 )だ。詳しい構造などはリンクページなどを参照して欲しい。
大きな特徴として、「強い力に対して大きくしなって素早くもどる特性」がある。これはYONEXの各分野で使われている。ラケットやゴルフシャフトである。最近のYONEXの躍進はテニスやバトミントンを見ても世界的である。
その技術がヘッドチューブとフロントフォークに投入されている。↓
(YONEX HPより)
つまり、ハンドルに上がってくるアスファルトノイズや衝撃をストレートフォークでもしっかり吸収してくれるのだ。
特に段差などのギャップなど速くて大きい衝撃に対して効果が大きい事がわかる。邪魔な振動は取り除いてくれるが、ちゃんと路面状況はコミュニケーションしてくれる感じと言うと何となく感じは理解して頂けるだろうか。
また、エアロフレームにありがちな過度の剛性アップによる硬いだけのフレームになることを避けるため、バイブスレイヤーカーボンをトップチューブ、シートチューブ、シートステイに使う事によって、YONEXの特徴である縦振動を吸収して路面の追従性をこれまで以上にアップしている。路面に吸い付くような感覚はここから生まれている。↓
(YONEX HPより)
特筆したいのは、ダウンチューブ及びチェーンステイにはバイブスレイヤーを使用していない点だ。ベテランライダーの方はご存知だと思うが、自転車の推進力はこのダウンチューブとチェーンステイの剛性で決まるといって良い。この部分が柔いとBB付近の剛性が保たれず、自転車は前後輪がバラバラの方向に動いてしまい、出力ロスはおろか乗れたものではない。
YONEXは余分な加工をフレームに施すのではなく、必要な特徴はその特徴を持つ最新カーボン素材を適材適所に使ってモノ作りをしているところだ。その結果エアロロードとしては驚異の軽さに仕上がっている。完成車重量は 7.1kg !!
対比 HR フレーム +100g フォーク +40g
対比 CARBONEX フレーム +180g フォーク +60g
シートピラー ヤグラ込 180g
全くロードとして使っていただける軽さだ。ミドルグレードのカーボン素材を使用したフレームではノーマル形状でもこの軽さには遠く及ばない。
しかも、トライアスロンバイクとしても非常に有効だ。トライアスロンと言えばTTバイクをイメージしがちだが、どうも極端な前乗りは苦手だなぁ・・・。なんて方にオススメしたい。現在使用しているロードのライディングポジションのままで、エアロ効果は大きくなっている。オフセット0mmのシートピラーも用意されているので、前乗りを好まれる方にも対応するフレームである。
AEROFLIGHTフレームの開発にあたり、「KINAN CyclingTeam」の中島康晴選手はこう語ってくれた。
・リアホイールがものすごく安定した感じです。
・ホリゾンタルにすることで前三角が大きくなり、よりカーボンの特性が感じられる。
・ヒルクライム系の反応性はHRだが、AEROFLIGHTはエアロ形状ではあるがオールラウンドモデルと言えます。例えばこれまでのCARBONEXやHRだとゴールスプリントにゴール手前200mからダッシュするが、AEROFLIGHTはゴール手前300mからダッシュしてもグングン進むので引き離してゴールする感じです。
・Namdとバイブスレイヤーの効果か、踏み込み域が広くなっています。出力が大きくなる2時からカシ点までしっかり踏み込めるフレームです。
・とにかくよく進むフレームに仕上がっています!
何とも魅力的な文言が並んで聞こえるではないですか。そう言われると、皆さん実際に試乗して確かめてみたくなるのは当然ですよね。っと言うことで「AEROFLIGHT」の試乗会を行ないます。が、デリバリーは2019年1月からなので、早くても年内に開催できるか?という状況です。
「AEROFLIGHT」の試乗会が決まり次第、ブログでご案内させて頂きます。ちょこちょこチェックして下さいね。
YONEX AEROFLIGHT
重量:830g (Sサイズ未塗装)
カラー:YONEX・グラファイト
シートポスト:オリジナル(オフセット 20mm/0mm) 180g (ヤグラ含む)
タイヤサイズ:700×28C 対応
サイズ : XS・S・M・L (全サイズホリゾンタル設計)
価格 : ¥700,000 (税抜)
デリバリー : 2019年1月下旬~
(DISCモデルのリリース計画は進行中)
今回も長々と駄文を読んで頂きありがとうございました。
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http://www.yonex.co.jp/roadbike/news/2018/10/1810241700.html